境内の四季200910 of 慶蔵院<境内の四季>

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2009.10

2009.10.30

白玉椿

白玉椿
 この品種は、白玉の別名をもつ初嵐です。白色、一重咲きで、ごく早咲き、冬に先駆けて咲き、茶花には欠かせない花とされてきました。何とも言えない清らかさを持った花です。裏庭の白萩の隣に植わっています。花形は落下時まで姿をくずしません。
 元禄時代に関西で流行した琴唄椿尽しの中にも読み込まれていて、古くから一重の早咲きの品種として愛好されていたことがわかります。
 今年、境内にあるすべての椿については、剪定を行いませんでした。そのため例年になく沢山の蕾をつけてくれています。いち早く咲きだした初嵐につづいてこれから、早春にかけて徐々に、咲きだしてくれる椿、楽しみです。
 早咲きの椿身にしむ白さかな 格也

2009.10.29

イチョウ

若い公孫樹の樹
 10月8日の18号台風で、大公孫樹の葉はほとんど落ちてしまいました。しかし、西側の釣鐘堂の前にある若い公孫樹の樹の葉は、写真のように暴風雨に耐え、葉が残りました。そして、少し黄葉がすすんできました。
 この公孫樹の実、銀杏は、形がラグビーのボールのように少し縦長になっています。そのため南無阿弥陀仏と書きやすく、私が銀杏名号を作成するのに利用するのは、こちらの公孫樹の銀杏です。10年くらい前からぼつぼつと実が落ち出していましたが、ここ4,5年でたくさん落ちるようになってきました。
 祖父(公)が種をまいても、実がなるのは孫の代になることから「公孫樹」とよばれるのだそうです。
 還暦やいてふもみじの下に立つ 格也

2009.10.22

お茶の花

お茶の花
 境内の周りには、お茶の木があちらこちらにあります。藪山であったところですから、自然に生えていた木のように思えるのですが、もともとお茶の木は中国原産のもの、やはり誰かが、いつの時代かにここに植えたものなのでしょう。
 葉を摘まれるわけでもなし、植木として丁寧に選定されるでもなし、好きなように自分の居場所を定めて、それでいて不思議と存在感があるのがお茶の木です。それは、お茶の花にもいえます。咲いているぞ、美しいぞと自己主張するわけでもなく、隠れるように咲いています。ところが、その美しさは、また格別です。珍しくこちらを向いていてくれる花が写真に収まりました。
 珍しくこちら見てをりお茶の花 格也

2009.10.21

センリョウ

センリョウ
 千両の実の色がかなり赤くなってきました。廊下の窓下の千両です。ここが一番日当たりが悪いため、葉の色が濃い色になっています。今年はこの場所の千両に良い実がなりました。
 この場所は、廊下から枝が切れるので、実の付いた枝を年末に、ほとんど切り取りました。これが次の年に良い実をつけさせるコツのようです。
 西側の樟の木の下の千両は、切ることができずにそのまま一年間放置してしまいました。結果、今年の実はさんざんです。今年は、しっかりと切り戻しをしつつ、育てなおしてみたいと反省しています。
 昨日より今日へ明日へと実千両 格也

2009.10.17

キンモクセイ

キンモクセイ
 裏門を入ったすぐの左側にキンモクセイの木があります。この木が、この場所に植えられて30年になります。これは、宮川高校の卒業生の卒業記念に配られた記念樹なのです。卒業記念に「木」を選んだのは、後にも先にもこのときだけです。当時、生徒会を担当してくれていたK先生が、伝手を頼って、全校生徒分のキンモクセイの苗木を集めてくれたのです。
 この卒業生は、私も一年生C組、二年生D組と二年間は担任としてかかわった卒業生です。友情と連帯、仲間作り、一人は皆んなのために、皆んなは一人のために、失敗を恐れるな失敗しないということは何もしないということだと、何にでも挑戦しながら取り組んでいった素晴らしい生徒たちでした。あれから30年たったのです。
 失敗も悔いることなし金木犀 格也

2009.10.16

ツワブキ

ツワブキ
 あまり葉も花もよくありませんが、ツワブキの黄色が本当の黄色かなとおもうことがあります。この花も鳥羽高校を退職する際に、学校近くの崖に咲いている小さな株を何株か持ち帰ってきたものの一つです。
 どうしても半日陰になるため、株は今だに大きく育っていません。場所を考えてやらないとかわいそうかもしれません。それでも、毎年こうやって小さな命の花を咲かせてくれるのは嬉しいことです。
 それにくらべて鳥羽から志摩、南勢、南島のリアス式海岸の崖に咲くツワブキの群生の花。大きく育ったツワブキの葉に太陽の光が照り輝き、花の黄色がますます陽に映える姿は見事です。
 潮騒の陽に映える崖石蕗の花 格也

2009.10.15

センリョウ

センリョウ
 裏庭にある千両の実が色づき始めました。ぐっと冷え込む日が来れば、一気に真赤に変わるのですが、今のところ徐々に徐々にというところでしょうか。
 どういうわけか、この千両が大好きです。ですから裏庭のいたるところに千両が群生しています。これまでは特に意図的に増やそうとしてきた訳ではありません。古株のサツキが、祖父による手入れが遠退き始めて以来、枯れはじめ、その代わりに自然に千両が増えていったという感覚があります。
 日当たりの関係か、これまで表の境内には千両がありませんでした。しかし、半日陰になっている場所はたくさんあります。境内の適地にも千両を増やしていきたいと思います。毎年、実が落ちて新しい芽を出してくれるのですから。
 実千両もうじき客の着く時間 格也 

2009.10.14

ホトトギス

ホトトギス
 花びらの斑点が、鳥のホトトギスの胸にある斑点に似ていることから、この名前がついています。ホトトギスは、毎年、裏庭の二ヶ所にかたまって咲きます。   一カ所は、座敷の廊下側の窓の下、千両の下草のように、日影から日のあたる方向に、這うように伸び出し咲いています。もう一カ所は、裏庭の東側にある水道の蛇口の下。日当たりが比較的良い場所のため、大きく伸びて咲いています。
 この花、約30年前、弟のお嫁さんの実家からいただいてきて移植したものだと記憶しています。多年草で、毎年同じ場所に芽をだし、こうして花を咲かせつつ、だんだんその数を増やしてきています。
 片言の日本語じょうず杜鵑草 格也

2009.10.12

ミズヒキ

ミズヒキ
 この花、細い花穂を上から見ると赤く、下から見ると白く見えることから、紅白の水引にたとえて、この名がついているのだそうです。
 境内のあちらこちらの植込みの中に、下草に混ざって、毎年、8月頃からたくさん咲き続けます。ところが、今年は、それが目立ちませんでした。私たちが見落としたのか、花が咲く前に枯れてしまったのか、丁寧に見てみると枯れたミズヒキが、何本か植込みの中に残っています。今年はどうしたのだろう…そんな話をしていたら、今頃になって庭の隅で、一本のミズヒキが花をつけていました。
 この石段の上に、銀木犀の古木があり、その下に、いつもならたくさん長く伸びているのですが、今年は写真の一本だけになってしまいました。
 水引の花さいてをり呼ばれけり 格也

2009.10.10

イチョウ

イチョウ
 8日未明の18号台風によって、境内の公孫樹の葉はほとんど落としつくされてしまいました。今回の台風は西からの風が強かったため、境内の東側にある公孫樹の枝が折れる被害は、最小限で済みました。
 それにしても、これで公孫樹の黄葉は、望めなくなったと妻は残念がっています。そうかもしれません。今の姿は、12月末の状態です。しかし、あと約三カ月あります。生命力あふれる公孫樹が、このままだまって冬を待つはずがないと思うのです。冬が来る前に、芽を出し葉を広げそして黄葉するミニサイクルを再度、超スピードでやり遂げるのではないか…。
 8日、境内を掃除してくださった皆さんが、これで今年の冬の掃除は楽になると話していたそうですが、私は、半ば期待を持って「そうはいかないだろう」と思っているのです。さて、どうなるでしょうか…。
 口あけて公孫樹を見上ぐ台風禍 格也

2009.10.4

ハギ

ハギ
 この萩の花、いくつかある種類の中で、何という名をもっているのか、その名前を知りません。一昨年、境内の花になったものです。父親の、少し年が離れた弟である叔父さんが持ってきてくれた、柏葉アジサイの鉢植えの中に、一緒に咲いていたものです。地植えにしたところ大きくなって花を咲かせてくれました。
 場所は桂の樹の下です。ここは、境内の中でも、もっとも可能性のある場所と言えば聞こえが良いでしょう。言いかえれば、手つかずの状態。種々雑多なものが、取敢えず植えられているところと言っていいと思います。
 先だっても、余った土をこの萩の花の後ろ側に入れたところです。ここに三年目に入ってきた実生の千両が何株か大きくなってきています。しかし、その間から自然生えの八つ手がさらに大きく伸びてきています。
  いいのです。私は、庭ではなくて森を作りたいのです。
 木々もみな同じ息せり萩の花 格也