2009 of 慶蔵院<境内の四季>

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2009.12

2009.12.29

ホンツゲ

ホンツゲ
 志摩半島には天然記念物に指定されているホンツゲの群生があります。太平洋を吹き上げる風にさらされて、崖にへばりつくように生えていると聞ます。船から見なければなかなか見れないとか…。
 ツゲと言えば、ツゲの櫛で有名ですが、小俣町では何といっても根付。根付とは、きんちゃく・たばこ入れなどの紐の端につけて、帯にはさむ、帯ばさみのこと。昔ながらの図案による根付だけでなく、新しい創作根付もつくられています。これがアメリカでは、かなり流行しているとかで、私が話を聞いた方の作品は、ほとんど輸出されているとのことです。
 このホンツゲの木、最初に赴任した尾鷲工業高校の教員時代に、海上保安庁の職員であった知人から、鉢植えをもらってきたものを地植えしたものです。30年たっても、まだ、私の腰までの大きさです。
 黄楊の木の塵を落として掃き納め 格也

2009.12.16

キンカン

キンカン
 この金柑の大きさ、直径3.6㎝もあります。今年は、なにかしら花のつき方が悪いのではと思っていました。結果、やはり実の数は多くありませんでした。しかし反面、大きな実となりました。裏庭の一角で輝いています。このまま置いておくと、全部、鳥が食べていくことになります。
 定時制高校に通っていた7年前には、時間の余裕もあって、ゆったりとしていて、自分で裏庭に出て、捥いできた5~6個の金柑をいただいたりしたものです。
 しかし、この五年間、金柑のことをすっかり忘れていたことに気がつきました。この時期、お寺の大きな行事が毎年続いてきていたのです。今年は金柑が、大きな実をつけてくれたおかげて、いただくことができました。
 金柑を分け合ってをり知らぬ間に 格也

2009.12.13

落葉したヤマザクラ

落葉したヤマザクラ
 11日の雨と風によって山桜の葉は、すべて散り落ちてしまいました。冬の日差しに、小刻みに輝く小枝が美しく感じられます。
 夏の葉桜の下では、8月24日の地蔵盆、この山桜の枝に、初盆灯篭が吊られ、日が暮れると精霊送りが行われます。以前は「かんこ踊り」が行われ、念仏踊りの中で、精霊が送られました。この「かんこ踊り」、いったん途絶えたものの、新たに復活されてからは、8月15日に踊られるようになりました。しかし、慶蔵院の初盆精霊送りは、昔ながらの地蔵盆に、この桜の木の周辺で行われます。
 そして葉が全部落ちてしまった山桜の下では、12月31日の除夜の鐘、多くの人が山桜の下に集い、甘酒をいただきながら、鐘をつく順番をまちます。
 落ち葉して枝小刻みに輝けり 格也

2009.12.12

スイセン

スイセン
 境内のいたるところに水仙の花が咲きます。まっさきに満開になった場所は、本堂の西側、朝日を除くと、一日中、最も日当たりのよい場所です。ここは恵まれた環境です。ただ、土は痩せている場所だと思います。にもかかわらず、かえって美しい花を咲かせてくれています。
 南側の高塀の下にあった水仙にとっては、今年は受難の年となりました。無縁仏整備のため、掘り返されたからです。掘り出された水仙は、また境内のあちらこちらに移植されました。本当は、その方が水仙にとっていいのでしょうか、花がよくつくのでしょうか…。
 水仙へ陽の一回りするひと日 格也

2009.12.6

マンリョウ

マンリョウ
 裏庭の棕櫚竹の後ろにある万両です。この境内の四季において、下記の日程で二度、紹介させていただきました。7月18日、花が咲き、8月29日、青い実となりました。よろしければ、遡って一度ご覧ください。
 この青い実が赤く色づき始めたのは11月29日、表の万両より、大幅に遅れての色づきでした。今年は、この実を無駄にせず、蒔いて発芽させ、苔玉づくりの材料にしようと思います。
 山道を行く旅人が、闇夜に灯りを見つけたとき、きっと思うであろう、その思いに似た感覚を呼び起こしてくれる、冬の万両の実です。
 しがらみの闇夜に灯り実万両 格也

2009.12.5

イチョウの黄葉

公孫樹
 4日の午前中に撮影しました。今年の大公孫樹の黄葉のピークです。18号台風で、ほとんどの葉が落ちてしまい、残った葉だけの黄葉となりました。今日は、雨のため、どんどん散りだしています。
 11月20日の「住職活動日記」に書いたのですが、この大公孫樹、大正10年3月21日に記念樹として植樹されたものと判明しました。13年ものの公孫樹を植樹したと考えて、今年でちょうど百年の年輪を重ねた公孫樹です。先々代の祖父が慶蔵院に晋山して植樹された樹であると考えられます。
 公孫樹の成長に思いをもって、この「境内の四季」を書き始めましたが、むしろ公孫樹が、私たちに思い入れを持ってくれているのだと思えてきました。
 思ふとは思はるること銀杏散る 格也

2009.12.4

ツタの紅葉 2

ツタ
 散る間際が最も美しい。これが実感です。人間もかくありたいものです。蔦はその瞬間を見逃すことなく、写真に収めることができました。写真担当、妻のお手柄です。錦木は、一日遅れたため、チャンスを逃しました。今回の蔦、昨日、天気が悪かったのですが、カメラに収めました。今日の天気は青空一面、申し分のない天気なのですが、この美しい葉は、ほとんど散り落ちてしまっています。
 11月27日の「境内の四季」の写真と見比べてみてください。この時とは、比べようがないほどの美しさとなっています。どうぞ、写真をクリックして拡大してご覧いただければと思います。境内の中で、これほど自然を楽しむことのできる日々、幸せなことです。
 連れそうてひと日かみしむ蔦紅葉 格也

2009.12.3

サンショウの黄葉

サンショ
 山椒がみごとに黄葉しました。裏門の横です。かつてここにはモミジの古木がありました。裏門の工事で根が傷んだためか、徐々に弱り始め、大きな猿の腰掛を付けた後、枯れました。よく登って遊んだ木だけにさみしくなりました。
 その場所に、今から20年ほど前、境内の隅に生えていたマッチ棒ほどの山椒を、妻が植え替えました。
 この山椒、実が成りだして10年ほどになります。境内の隅にも、あちらこちらに山椒があるのですが、実がなるのは二株です。雌雄異株なのです。それにしても山椒ほど楽しめる木は、ないのではないでしょうか。芽を食べ、実を食べます。母は、この実で昆布とちりめんじゃこの佃煮や、キャラ蕗を作ってくれます。この山椒、例年、10月の剪定時に刈り込まれてしまうのですが、今年は、切らずにのこしました。
 山椒枯るいつも仏に護られて 格也

2009.12.2

キセンリョウ

キセンリョウ
 やっと千両の黄色が色づきました。この場所に一株しかなかつた黄色の千両ですが、いつの間にか、境内のあちこちに広がっていることに気がつきました。
 物干し台に面した槇垣に添って、鳥が種を運んでくれたらしく自然生えていました。それから、このほど整備された開山上人の墓地を区切る塀の下に。
 これは三年ほど前に、芽を出したぱかりの千両を何本か、この場所に移植したことを覚えています。しかし、それが何色の千両であったのか、全く忘れてしまっていました。実が色づいて初めて、黄千両であったとわかったしだいです。
 入りきたる小鳥飛び去れ実千両 格也